IT業界で長く仕事をしていると、「どうしてこの人がリーダーをしているんだろう?」と思う現場に遭遇することがあります。
今回は、私が実際に参画した案件で経験した、「SIer社員というだけでリーダーになっていた案件」について書いてみます。
もちろん、すべてのSIer社員がそうだと言いたいわけではありません。しかし、この案件では「所属会社」と「リーダー適性」が完全に切り離されているように感じました。
参画数日で嫌な予感がした
案件へ参画して間もなく、ある異変に気付きました。
リーダーとBP(ビジネスパートナー)の3名(Yさん、Kさん、Kさん)が、すでに険悪な雰囲気になっていたのです。
普通であれば、新しく参画したメンバーには良い雰囲気を見せようとするものですが、その案件ではそんな空気は一切ありませんでした。
やり取りを見ていると、リーダーの指摘は必要以上に相手を追い詰めるような言い方が多く、「これは長く続かないな」と感じたことを覚えています。
私自身、この時点でかなり嫌な予感がしていました。
リーダーに必要なのは所属会社ではない
日本のSI業界では、多重下請け構造が当たり前になっています。
そのため、元請けやSIer社員というだけでリーダーを任されるケースは珍しくありません。
しかし、本来リーダーに求められるものは何でしょうか。
- 人の話を聞く力
- メンバーをまとめる力
- 相手が納得できる説明力
- トラブルを大きくしない調整力
こうした能力があって初めてリーダーとして機能します。
所属会社が違うだけで自動的にリーダーになる仕組みには、以前から疑問を感じています。
「コミュニケーション能力重視」はどこへ行ったのか
IT業界では採用面接でも現場でも、
「コミュニケーション能力が大事です。」
という言葉を本当によく耳にします。
ところが、実際の現場を見ると、その評価基準が機能しているとは思えないケースもあります。
技術力だけではなく、人間関係を悪化させない能力や、メンバーが気持ちよく働ける環境を作る能力こそ、リーダーには必要です。
「コミュニケーション能力重視」という言葉と、現実とのギャップを強く感じた案件でした。
毎日の会議が苦痛だった
この案件はフルリモートで、スクラム開発を採用していました。
スクラム開発は会議が非常に多く、
- デイリースクラム
- レビュー
- レトロスペクティブ
- プランニング
など、ほぼ毎日のようにオンライン会議があります。
ところが、そのリーダーは話している間、常にマイクから「ハァ……ハァ……」という息遣いが入り続けていました。
最初は体調でも悪いのかと思いましたが、毎回同じです。(良く言えば)体格がかなり大きい方だったこともあり、少し話すだけでも息遣いがマイクに乗ってしまっていたようです。
イヤホンで聞いているとかなり気になり、会議の内容よりも息遣いのほうに意識が向いてしまうことも少なくありませんでした。
オンライン会議では、自分では気付きにくいものですが、マイクは想像以上に細かな音まで拾います。話し方やマイクの位置、ノイズキャンセリングなどへの配慮も、円滑なコミュニケーションの一部だと改めて感じました。
毎日何度も会議があるスクラム開発だからこそ、このような細かな点でもメンバーへの負担は意外と大きいものだと実感した出来事でした。
次の標的は私だった
実は、私が参画した直後にBP3名とリーダーが揉めているのを見た時点で、ある程度この展開は予想していました。
組織心理学には「スケープゴート理論」という考え方があります。チーム内で問題が起きたとき、本質的な原因を改善するのではなく、特定の一人を「問題人物」として扱うことで組織のバランスを保とうとする現象です。
そして、このような組織では、一人がいなくなっても問題は解決しません。単に次のスケープゴートが選ばれるだけです。
私は長年SESやSI案件に携わってきた経験から、「このままBP3名が契約終了したら、次は別の誰かが標的になるだろうな」と感じていました。
そして、その予感は的中しました。
BP3名の契約終了後、今度はリーダーの矛先が私に向いてきたのです。
仕事内容そのものより、人間関係で消耗する時間が増えていきました。
技術的な課題であれば議論する価値があります。しかし、感情的な対立や、誰かを悪者にするための消耗戦に付き合う時間は、本当に無駄だと感じました。
若い頃なら戦っていたが
20代や30代前半の頃であれば、私も徹底的に反論し、改善を求めていたと思います。
しかし、この案件に参画した頃には、資産形成もある程度終わっていました。
「こんなことで自分の時間や精神を削る必要はない。」
そう考えるようになっていたのです。
仕事は生活のための手段であって、理不尽な人と戦うことが目的ではありません。
無理に勝とうとするよりも、環境を変えるほうが合理的だと判断しました。
契約終了という選択
最終的に私は契約終了を選びました。
「逃げた」と思う人もいるかもしれません。
しかし、私はそうは思いません。
戦う価値のある相手と、戦う価値のない相手はいます。
後者に時間も精神力も使うくらいなら、新しい案件や、自分自身の資産運用、ブログ運営など、将来につながることへ時間を使ったほうが何倍も有意義です。
まとめ
今回の案件で改めて感じたのは、「SIer社員だからリーダー」ではなく、「リーダーとしての適性がある人がリーダーになるべき」ということです。
所属会社だけで役割を決める文化が残っている限り、同じような問題は今後も起こり続けるでしょう。
SESやSI業界で働いている方の中には、私と似たような経験をした人も少なくないのではないでしょうか。
もし今、人間関係だけで消耗しているのであれば、「戦い続けること」だけが正解ではありません。
環境を変えることも、立派な選択肢の一つだと私は思っています。
